SilverStone SST-TF01 は、CPU・GPU とクーラーの間に塗るシリコン系サーマルグリスです。この記事では、公開されているスペックとレビュー実績をもとに「どんな人が買うべきで、どんな人は別の製品を選ぶべきか」まで踏み込んで整理します。
概要
SST-TF01 は SilverStone が「高い熱伝導率」を掲げるシリコングリスで、日本正規代理店品として流通しています。メーカーは分離・浸透・漏れが起きにくい設計をうたっており、塗ったあとに垂れたり基板側へ滲み出したりしにくいことを特徴としています。掲載スペック上の重量は 20g で、一般的な CPU 1 個分の塗布量(豆粒大でおよそ 0.2〜0.5g)から逆算すると、数十回分に相当する大容量です。位置づけとしては「ハイエンドの性能を取りに行く一本」ではなく、コストを抑えて何度でも塗り直せる汎用グリスと考えるのが実態に近いでしょう。
Amazon 掲載のレビューは 2026年5月19日取得時点で 14 件、平均 4.2/5(好評率 84%)です。悪くない評価ですが、母数が 14 件しかない点は正直に受け止める必要があります。数千件規模のレビューを持つ定番グリスと比べると、「多数の環境で検証された実績」という意味での安心感はまだ薄い水準です。
互換性ガイド
グリスにソケット互換の概念はありませんが、「どこにでも使える」わけでもありません。実務上のチェックポイントは次の 4 つです。
| 確認項目 | SST-TF01 での扱い |
|---|---|
| CPU ソケット | Intel LGA・AMD AM4/AM5 いずれも塗布対象。ソケット形状による制限はない |
| 塗布対象 | ヒートスプレッダ、ダイ直(殻割り後)、GPU コア、チップセット、VRM ヒートシンク |
| 面の状態 | 清潔かつ乾燥していること。古いグリスは無水エタノール等で完全に除去する |
| 付属品 | チューブのみ。ヘラ・クリーナー・アルコールシートは別途用意 |
公式の互換性メモにもある通り、条件は「塗布面が清潔で乾燥していること」だけです。逆に言えば、失敗の大半は製品側ではなく下準備で起きます。特に AM5 のように IHS の反りが話題になるソケットでは、グリスの銘柄よりもクーラーの取り付け圧と接触面の均一さのほうが温度に効きます。反りが疑わしい環境なら、グリスを買い替えるより先にコンタクトフレーム類の導入を検討したほうが費用対効果は高いです。
もう一点、電気伝導性については製品ページに明示が見当たりません。一般にシリコン系の非金属グリスは電気を通しにくいとされますが、はみ出したグリスが基板やソケットピンに乗った状態で通電させるのは、どの銘柄でも避けるべきです。塗り過ぎない、はみ出したら拭き取る、という基本を守ってください。
商品情報
主要な登録情報は、ブランド/メーカーともに SilverStone、モデル番号 SST-TF01、ASIN B08QYV54LD、梱包サイズ 16.2 × 11.2 × 0.6 cm、重量 20g、同梱バッテリーなし、です。梱包サイズが厚さ 6mm の平たい形状であることから、ブリスターパックにチューブが収まった一般的な小売パッケージだと分かります。
価格は 2026年5月19日取得時点で Amazon.co.jp にて ¥1,118 です。グリスの価格は在庫状況やセールで頻繁に動くため、この金額はあくまで取得時点のスナップショットとして扱ってください。もう一方の販売経路として eBay 検索が用意されていますが、こちらは価格が取得できておらず「出品を確認」の状態です。海外出品は送料と到着日数を含めると国内購入より不利になりやすいので、まず国内価格を確認するのが無難です。
熱伝導率の具体的な W/m·K 値は、今回参照できるデータには含まれていません。パッケージやメーカー製品ページに記載がありますので、他製品と数値で比較したい場合はそちらを確認してください。この記事では、確認できない数値を推測で書くことはしません。
塗り方と失敗しないコツ
大容量チューブは「たくさん塗れる」のが利点ですが、実際には塗る量を増やしても温度は下がりません。グリスの役割は金属同士の微細な凹凸を埋めることで、厚い層はむしろ熱抵抗になります。基本は次の手順です。
- 古いグリスを完全に除去する。拭き残しがあると、そこが断熱層として残ります。
- IHS 中央に豆粒〜米粒大を 1 点置き、クーラーの圧力で広げる。四隅まで無理に伸ばす必要はありません。
- クーラーのネジは対角線順に、少しずつ均等に締める。片締めは接触ムラの最大の原因です。
- 塗り直したら、ベンチマークではなく実使用の負荷でアイドル温度と高負荷温度の両方を記録し、次回の比較基準にする。
グリスの交換で得られる温度差は、多くの場合 2〜5℃ 程度です。10℃ 以上の改善が出た場合、原因はグリスの銘柄ではなく「前のグリスが完全に乾いていた」「クーラーが浮いていた」のどちらかであることがほとんどです。
競合製品との比較
同じ大容量帯には ARCTIC MX-4 の 20g 版があり、こちらは長期の実績とレビュー数で優位に立ちます。少量でよいから信頼性の高い一本が欲しいなら Noctua NT-H1、AM5 環境で塗布面積の広さに合わせたい場合も同様に定番が存在します。SST-TF01 の相対的な強みは、正規代理店品として国内で安価に入手できることと、大容量で 1 回あたりの単価が下がることです。逆に「レビュー母数による裏付け」「メーカーが公表するベンチ比較の充実度」では、定番製品に一歩譲ります。
価格差が数百円しかない場面では、実績のある定番を選ぶ判断も十分合理的です。逆に、修理・整備で年に何十回も塗る用途なら、単価の安い大容量チューブのほうが総額で効いてきます。用途の頻度で選び分けてください。
おすすめユーザー
- 複数台の PC を組む・整備する人:20g という容量は、CPU 1 個あたり数百 mg の消費なら数十回分に相当します。1 回あたりのコストを下げたいシステムビルダーや、家族・職場の PC をまとめて面倒見ている人に向きます。
- 初めてグリスを塗り替える自作初心者:量に余裕があるので、1 回失敗して拭き取り直しても残量を気にせず再挑戦できます。これは想像以上に大きな安心材料です。
- 定期メンテナンスを習慣にしている中級者:数年おきの塗り直しで冷却性能を維持したい人にとって、常備しておく一本として妥当な価格帯です。
- 予備を 1 本置いておきたい人:グリス切れでクーラーを外せない、という事態は地味に痛手です。安価な大容量品はストック用途と相性が良いです。
購入前の注意点
最後の数℃を削りたい人には向きません。 200W を超えるような高発熱 CPU をオーバークロック運用し、ベンチマークのスコアを 1 でも上げたいという用途では、熱伝導率を公表して比較検証が積み上がっている上位グリスや液体金属のほうが目的に合います。SST-TF01 は「十分な性能を安く、たっぷり」の製品です。
レビュー母数が 14 件しかない点は割り切ってください。 平均 4.2 は良好な数字ですが、14 件では極端な意見 1 つが平均を大きく動かします。長期使用時の乾燥やポンプアウト(熱サイクルでグリスが接触面から押し出される現象)の傾向を、レビューだけで判断できるだけの情報量はありません。ハイエンド構成で数年間ノーメンテを前提にするなら、実績の厚い製品を選ぶほうが安全です。
20g という表記の解釈に注意してください。 掲載されている「重量」は商品情報上の値であり、グリスそのものの正味量とパッケージ込みの重量が同じとは限りません。実際に何グラム入っているかを厳密に知りたい場合は、メーカー製品ページの表記を確認してください。
価格表記は取得時点のものです。 本文の ¥1,118 は 2026年5月19日時点の値で、セールや在庫状況で変動します。購入前に必ず商品ページで現在価格を確認してください。また、販売経路のラベル表記が実際の販売サイトと一致していないことがあります(今回も「Amazon US」というラベルで Amazon.co.jp の日本円価格が入っていました)。表示ラベルではなく、リンク先のドメインと通貨記号で判断してください。
商品ページの登録情報そのものが誤っていることがあります。 サーマルグリスは型番の似た製品が多く、通販サイトの登録情報に別製品のメーカー名や型番が紛れ込んでいる例が実在します。今回のデータではメーカー名(SilverStone)とタイトルは一致していますが、注文前に商品画像とタイトルで「SST-TF01」であることを自分の目で確認してください。
塗布道具は付属しません。 ヘラ、無水エタノール、キムワイプ等の清掃用品は別途必要です。初めて塗る人は、これらを一緒に買っておかないと作業当日に手が止まります。
よくある質問
Q. 20g はどのくらい使えますか?
A. CPU 1 個あたりの塗布量は豆粒大でおよそ 0.2〜0.5g が目安なので、単純計算で数十回分です。実際の消費量は塗布面積(AM5 や大型 GPU は多めに要る)で変わります。
Q. GPU のグリス塗り替えにも使えますか?
A. 使えます。ただし GPU はダイが露出した構造で、周囲の VRAM やチップ部品との距離が近いため、はみ出しに注意してください。GPU の分解はメーカー保証が切れる可能性があります。
Q. 熱伝導率は何 W/m·K ですか?
A. 今回参照したデータには数値が含まれていません。パッケージまたはメーカー製品ページに記載がありますので、そちらでご確認ください。推測値をここに書くことはしません。
Q. 定番グリスと比べて何℃くらい差が出ますか?
A. 同じクーラー・同じ取り付け圧で比較した場合、一般的なグリス同士の差は数℃に収まることがほとんどです。それ以上の差が出たときは、取り付けや清掃の差を疑ってください。
Q. どのくらいの頻度で塗り直すべきですか?
A. 常用環境では数年に一度で十分です。ただし、以前より高負荷時の温度が明確に上がってきた、ファンが以前より早く高回転になる、といった兆候があれば時期に関係なく点検してください。
商品情報
(Amazon参照)
- メーカー名: SilverStone
- 販売元: Amazon.co.jp
- 出荷元: Amazon.co.jp
- ASIN: B08QYV54LD
- 注記: 本記事はメーカー製造品をAmazon掲載情報に基づいて紹介しています。





